名作と言われる本を読んで、「まあ、こんなものか」 くらいの感想しか湧かず、
暫くたってもう、その本が本棚に有ることすら忘れかけていた頃に、
まったく予期せぬ角度から、自分のぬるい読後感を心地よく破壊されると言う、珍しい体験をしました。
かもめのジョナサン。
ヒッピームーブメントに押されて大人気になったアメリカの小説。
飛ぶ能力をエサをとるためだけに費やして生きる事に疑問を抱き、極限まで飛ぶ事を追究し、周りから白い目で見られながらも最後には神格化され、崇められるようになる、変わり者のカモメの話です。
70年頃のヒッピームーブメント全盛のアメリカの若者達が、禅の精神とグレイトなリーダーを求めていた頃の作品で、
マウロスカルニケもそんな時代背景を聞き齧り、知った積もりになって、特にヒッピー文化が好きなわけではなかったので(集団で反社会的な思想を持って反発する70年代よりも、
個人的な疎外感や家族とのすれ違いで反発する50年代の若者文化の方がしっくりくるお年頃だったのです)、
ふーん、位で読み終えて、読み返す事もなく時間は過ぎていったのですが、
ある日、
イントロにカモメの鳴き声が入ったある曲がスピーカーから流れだし、
4分18秒後には本棚から埃を被った紺色の表紙の本を引っ張り出して、それを手に持ったまま1人でスピーカーを凝視していました。
ジョナサン 人生のストーリーは
ジョナサン 一生じゃ 足りないよな
ジョナサン 音速の壁に
ジョナサン きりもみする
読書の感想なんて、
映画等の感想に比べてかなり個人的な物で
他人に話して共有したり、あまりしないものでしたが、
この感受性は…衝撃的であると同時にとても羨ましく思いました。
映画にしろ、音楽にしろ、小説にしろ、漫画にしろ、せっかく出会ったからにはもっと真剣に、謙虚に向かい合わなければ、と思いました。
甲本ヒロト氏、ありがとうございます。